高度プロフェッショナル制度について

高度プロフェッショナル制度について

【筆者】 佐々木 亮弁護士

働き方改革関連法で何がどう変わったのか?

今回の働き方改革関連法において、高度プロフェッショナル制度(高プロ)が新設されました。高プロは、よくマスコミで、働いた時間ではなく成果で賃金が決まる制度などと言われてきました。しかし、高プロは、賃金制度ではなく、労働時間規制のすべてを適用除外とするものです。

高プロ導入の仕組み

まず、高プロは、導入要件として、次の(a)~(d)全ての充足を求めています。

  • (a)使用者と労働者代表を構成員とした労使委員会の設置
  • (b)aの委員会が10の決議事項を5分の4以上の多数で決議すること
  • (c)bの決議について、使用者の厚生労働省令の定める方法による労基署への届出
  • (d)対象労働者の書面等の省令の定める方法による同意があること

そして、bの10決議事項とは、次の1~10です。

  • (1)対象業務の限定
  • (2)対象労働者の範囲
    • (ア)職務要件(使用者との間の書面その他の厚生労働省令で定める方法による合意に基づき職務が明確に定められていること。)
    • (イ)年収要件(基準年間平均給与額の3倍を相当程度上回る水準)
  • (3)健康管理時間の把握措置を講じること
  • (4)1年間を通じ、104日以上、かつ、4週間を通じ4日以上の休日を使用者が与えること
  • (5)対象労働者に対し、次のア~エの4つの措置のうちいずれかの措置を講ずること
    • (ア)始業から24時間を経過するまでに省令で定める一定時間以上の勤務間インターバルを確保し、深夜労働の回数制限をすること
    • (イ)健康管理時間を1カ月又は3カ月について、それぞれ省令で定める時間を超えないこととすること
    • (ウ)1年に1回以上継続した2週間の休日を与えること
    • (エ)週40時間を超える健康管理時間が月80時間を超えた場合等に健康診断を実施すること
  • (6)健康管理時間の状況に応じて有給休暇(年次有給休暇を除く)付与や健康診断の実施その他の省令で定める措置を講ずること
  • (7)対象労働者の同意の撤回に関する手続 
  • (8)苦情処理措置を決議で定めるところにより講じること
  • (9)同意しなかった労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならないこと
  • (10)その他省令が定める事項

どんな効果があるの?

高プロを導入するために、上記の要件をすべて満たすと、その対象労働者に対する労働基準法に基づく労働時間規制のすべて(労働時間、休憩、休日、深夜労働の割増賃金に関する規定)が外れます。

高プロ導入の高いハードル

このように労基法の労働時間規制がすべて外れるという強烈な効果をもたらす制度であるため、制度設計としては、そう易々と導入できないようになっています。

労使委員会の構成

まず、労使委員会ですが、5分の4以上の多数決での決議が必要とされています。もっとも、労使委員会の構成ですが、委員の半数については、過半数労組がある場合においてはその労働組合、ない場合は労働者の過半数を代表する者が指名した者がなるとされており、労働者側に立つ委員が全員反対すれば、高プロは導入できません。

決議事項における縛り

決議事項もそれぞれについて細かな縛りがかかります。

まず、対象業務(決議事項1)については次の5つとされています。

  1. 金融商品の開発業務
  2. 金融商品のディーリング業務
  3. アナリストの業務(企業・市場等の高度な分析業務)
  4. コンサルタントの業務(事業・業務の企画運営に関する高度な考案又は助言の業務)
  5. 研究開発業務

これらは、当初から言われていた5種です。

もっとも、省令案・指針案においては、さらに「裁量」という実質要件が付加されました。指針案によれば、「特定の日時を指定して会議に出席することを一方的に義務づけること」も時間に関する具体的指示に該当するとされ、たとえば、「毎週〇曜日の〇時から定例会議」というような指揮命令を、高プロ適用者にはしてはならないことになります。

本人同意と撤回

さらに、高プロの導入には、対象労働者本人の同意が必要とされています。

この同意を取るにあたっては、省令案では、(1)制度が適用される旨、(2)少なくとも支払われる賃金の額、(3)同意の対象となる期間を書面で明示した上でなければならないとされています。

指針案ではさらに細かく、制度の概要、決議の内容、同意した場合の賃金・評価制度、同意しなかった場合の配置及び処遇、同意の撤回ができること及び同意の撤回に対する不利益取扱いは行ってはならないことを明示するようにも求めています。

注意が必要なのは、同意の有効期間が定められることです。最長で1年とされ、1年ごとに毎回本人の意思の確認・書面の更新が必要となります。また、もしいったん同意しても、労働者はこれを撤回できるとされています。

佐々木 亮弁護士

東京弁護士会弁護士。旬報法律事務所所属。日本労働弁護団常任幹事。ブラック企業被害対策弁護団代表。ブラック企業大賞実行委員。首都圏青年ユニオン顧問弁護団。民事事件を中心に取り扱う。また、労働事件は労働者側・労働組合側の立場で事件を取り扱う。

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