有給休暇のルールについて

有給休暇のルールについて

【筆者】 佐々木 亮弁護士

有給休暇はいつ発生する?

有給休暇……。それは、仕事をしないで休んでいても給料が減らない(もらえる)という制度です。労働者にとってはありがたく、使用者にとっては痛い(?)制度かもしれません。ただ、人間は機械ではありませんので、有給休暇などでリフレッシュしてまた仕事に向かう方が効率的ですし、そもそも社会経済を考えれば、有給休暇があったほうが最終的にはメリットがあるものと思われます。

さて、この有給休暇ですが、法律ではいつ発生するとされているでしょうか。

それは、入社日からカウントして6カ月の間における全労働日に対して8割以上出勤すれば発生します。当然ですが、全労働日には休日は含まれません。また、夏期休暇や年末年始休暇などの休暇とされた日も含まれません。つまり、労働の義務がある日だけをカウントするのが「全労働日」ということになります。

また、労働基準法 の定めは最低基準ですから、これよりも早い時期・基準で労働者に有給休暇を付与しても、全く問題ありません。

有期雇用の場合は?

では、たとえば経営者が、従業員に有給休暇を発生させたくないと考えて、契約の期間を細切れにして結んできた場合はどうなるでしょうか。

この場合、契約と契約の間隔が空いてない場合は、連続して考えることになります。たとえば、3月31日に契約の終了となり、4月1日から新たな契約を締結する、というような場合です。これで契約期間ごとにリセットされることになると、いとも簡単に有給休暇を回避できてしまいますから当然ですね。法律上も「継続勤務」とありますので、間隔が空いていなければ 有期雇用でも当然有給休暇は発生します。

他方、間隔が空いている場合はどうでしょうか。この場合でも、単に間隔が空いているからといって、それだけで「継続勤務」ではなくなる、ということにはなりません。この場合は、契約の期間がどのくらいか、間隔を空けて契約を結び直す理由は何か、契約と契約の間隔がどのくらい離れているか、新たに雇用契約を結ぶ際の採用手続きはどのようなものかなどの実態を見てチェックします。

たとえば、ある企業において、3カ月契約を結び、これが終了すると1カ月間の間隔を空けて、また3カ月の契約を結び直す、ということを繰り返していたとします。その目的が、有給休暇を与えたくないから、というのであれば、明確な脱法行為ですので、「継続勤務」となるでしょう。

しかし、そうではなく、何らかの合理的な理由(たとえば、業務の繁閑を理由にしている場合)によるならば、3カ月の契約で1カ月の間隔の場合は、「継続勤務」と言えない場合があるかもしれません。ただ、どの程度の間隔であれば継続勤務とならないかについては明確な基準がありません。行政通達も「相当な期間」としか述べておらず、ケースバイケースでの判断となるものと思われます。

また、1カ月の間隔を空けたとしても、どういう採用手続きを行って再契約しているのかも問題になりますので、やはり一概には言えないことになります。

雇用形態が切り替わった場合は?

正社員(無期雇用)から有期雇用社員、逆に、有期雇用社員から正社員など、雇用形態が切り替わることがあります。

また、最近では60歳で一度定年退職してから、65歳までの継続雇用制度を利用して勤務を続ける場合もあります。この場合、有給休暇の扱いがどうなるか問題となることがあり、契約期間を細切れにした場合と同様に「継続勤務」かどうかで判断します。あらたな雇用形態になるので、契約書を作り直すことは多いと思いますが、実質的に継続していれば、それまでの勤務がリセットされることはありません。

7カ月の有期雇用契約の場合は?

たまに相談としてあるのは、契約を更新することを予定していない7カ月契約の労働者に対する有給休暇の日数の問題です。

先にも指摘したとおり、有給休暇は6カ月の継続勤務と8割以上の出勤で発生します。最初に発生する日数は、10日間です。そうすると、7カ月契約の場合でも、6カ月の間、8割以上勤務すれば、その時点で10日間の有給休暇が発生することになるのですが、経営者としては、あと1カ月の契約なのに10日間も休まれても……という思いから、残期間に按分比例した日数だけ付与できないか、と考える方もいるようです。※たとえば、あと1カ月の場合は、比例付与だと12分の1となりますので、1日より少ない日数(0.833日)ということになります。

しかし、このような残りの契約期間に按分比例した日数を付与することは違法となります。法律上も、「その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、(略)十労働日の有給休暇を与えなければならない」とのみ定めており、残期間に応じて与えるなどの留保はありません。

この点、沖縄米軍基地事件・最高裁昭和53年12月19日判決では、有給休暇発生時点で退職日が決まっている労働者に対して、残期間に応じて按分比例した日数を付与した点を違法と判断しています。これと同様に考えれば、残期間に応じた付与は違法です。

有給休暇の取り方

有給休暇は、労働者が、使用者に対して、時季(季節と具体的な時期のこと)を指定することで請求し、取得します。

労働者が有給休暇を申請した場合、使用者が、有給休暇の取得理由を説明させたり、その理由によって有給休暇の取得を制限してはいけません。そもそも、有給休暇は、法律上の権利ですので、使用者からの承諾すら必要ないのです。ですから、理由を説明する必要もなければ、その理由によって取得できる・できないが決まるということは、あり得ません。

ところが、実際には、有給休暇を申請する場合に理由を聞かれたという例は少なくありません。そもそも会社の有休申請書に「理由」欄があるということもあります。しかし、こうした運用は、有給休暇を取りにくい職場環境を作ることになってしまいます。

有給休暇の時季変更

使用者ができるのは、「請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合」にだけ、有給休暇を労働者が請求した日と異なる日に変更してもらうこと(時季変更権)だけです。

もっとも、「事業の正常な運営を妨げる場合」とは、有給休暇取得日における労働者の労働が事業運営に不可欠であり、また、代わりの労働者を確保するのも難しいという場合に限られます。

単に、「忙しい」というだけでは時季変更の理由としては不足で、その企業において労働者が従事している事業場における事業の規模や内容、その労働者の担当業務の内容・性質、代替の労働者を配置する困難さ、同じ時季に年休を請求した者の人数などで、総合的に判断されることになります。

時季変更権を行使したものの、それが適切なものではないとされると、有給休暇取得妨害となり、使用者が労働者に損害賠償義務を負うこともありますので、時季変更権を行使するにしても、慎重な対応が求められます。

計画年休制度とは?

以上のとおり 、本来は、労働者が自由に有給休暇を取得する日を決めて、休めばいいのですが、日本における有給休暇取得率は低く、問題となっていました。その背景には、「みんなが働いているのに、休むことへの罪悪感」があります。

そこで、有給休暇を取る時季をあらかじめ決めることで、気兼ねなく休めるようにしようという計画年休制度があります。なお、この制度の導入は1987年改正でしたが、それでも有給休暇取得率が上がらなかったのは周知のとおりです(原因としては計画的に付与する日数がそもそも少ないという点が指摘されています)。

この制度は、使用者が、事業場の労働者の過半数を組織する労働組合、または過半数の労働者の代表者との間で労使協定を結んで、有給休暇を与える時季について定めるというものです。定めることができるのは、有給休暇のうち5日を超える部分についてで、労働者の希望にかかわらず、有給休暇の時季を決定し、計画的に有給休暇を取らせることができます。

計画年休には、GWや夏季冬季などの大型の休みの前後に指定する事業場一斉型や、班や部署などの一定の集団ごとに交代で取得させる班・部署別型、また、個人ごとに決める個人型などがあります。問題は、計画年休ではなく、自分の好きな時に取りたいと思っている労働者が拘束されるのかということですが 、これは拘束されることになります。

5日間の年休取得義務

有給休暇の事前申し出1987年の改正で計画年休制度を設けたのですが、その後、特に有給休暇取得率が上昇することもなく、我が国の長時間労働は深刻さを増す一方でした。

そのため、2018年の労基法改正(2019年4月1日施行)で、使用者に対して、10日以上の有給休暇が付与されている労働者について、5日間の有休を取得させる義務を課しました。この義務に反すると30万円以下の罰金という刑事罰が科せられます。5日間の有給休暇取得義務は、労働者が自分の意思で取得した分は引かれます。つまり、労働者が3日の有給休暇を取得した場合は2日分の有給休暇を取らせればいいということになります。

この5日の年休をいつ取得させるかについては、使用者は労働者の意見を聴く 必要があり、その意見を尊重するよう努力する義務があります。もし5日間の年休を取得させなかった場合は、労基法違反となり、刑事罰が科せられますが、これは1名につき1つの刑事罰となるので、たとえば、大企業で100名の労働者に対して違反が生じたとすると、罰金は最大で3,000万円となります。

この法改正で、使用者には年次有給休暇管理簿の作成が義務付けられました。この管理簿を利用して、各労働者の有給休暇取得状況を把握し、5日に満たない者がいそうな場合は、取得を促したり、時季を指定して取得させることになります。

また、有給休暇が10日を超える労働者は正社員に限らず、パート社員やアルバイトでもあり得ます。雇用形態にかかわらず、10日を超えて付与されている労働者に対しては、5日間を取得させなければなりませんので、影響の大きい改正だと言えるでしょう。

所定労働
日数
1年間の
所定労働
日数
雇入れから起算した継続勤務年数(単位・年)
0.5年1.5年2.5年3.5年4.5年5.5年6.5年以上
4日169~216日7日8日9日10日12日13日15日
3日121~168日5日6日6日8日9日10日11日
2日73~120日3日4日4日5日6日6日7日
1日48~72日1日2日2日2日3日3日3日

有給休暇の事前申し出

また、突然の病気などで、その日に休む連絡を入れる場合があったり、状況によっては事後に有給休暇扱いをしてもらう場合もありますが、本来は事前に時季を指定することが必要なので、事後の申請は法の予定外のことです。

ただし、職場において、当日の申請や、一定程度の事後申請や欠勤日の有給休暇への振り替えを認めている場合もあります。これについては、使用者の裁量の範囲内として違法とはされていません。逆に、普段は事後申請を認めている運用を行っているにもかかわらず、この運用を突然変えて、欠勤日を有給休暇として処理しないことが裁量権の濫用とされることがありますので、注意が必要です。

取らなかった有給休暇は消滅する?

有給休暇がその年次で取得できず残った場合でも、翌年度に繰り越すことができます。ただ、さらに翌年度への繰り越しはできません。つまり、発生から2年で消滅してしまいます。

有給休暇を理解して取りやすい職場を

以上のとおり有給休暇には様々なルールがありますが、労使ともに有給休暇の趣旨をよく理解して、有給休暇を取得しやすい職場を作っていくことが大事だと思われます。

佐々木 亮弁護士

東京弁護士会弁護士。旬報法律事務所所属。日本労働弁護団常任幹事。ブラック企業被害対策弁護団代表。ブラック企業大賞実行委員。首都圏青年ユニオン顧問弁護団。民事事件を中心に取り扱う。また、労働事件は労働者側・労働組合側の立場で事件を取り扱う。

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