入社後いつから取れる? 日数など有給休暇のルール

入社後いつから取れる? 日数など有給休暇のルール

【筆者】 勝浦 敦嗣弁護士

入社してからどのくらい経てば有給休暇を取得できるのでしょうか?

有給休暇を取るための要件

有給休暇を取得する権利は、以下の要件を満たせば発生します。

  • 雇入れの日(入社日)から6カ月継続勤務したこと
  • その期間の全労働日の8割以上出勤したこと

「継続勤務」とは、労働契約が続いている期間、すなわち、会社に在籍している期間を指します。
では、同じ雇用主の下で、何度かに分けて雇用契約が結ばれ、この雇用契約に基づいて労働者が勤務しているような場合は、継続勤務といえるのでしょうか?

この要件は、形式的に労働者としての身分や労働契約の期間が続いているかによって判断されるのではなく、以下の事項を総合的に考慮して、雇用関係が続いているか否かを実態に即して判断すべきとされています。

  • 勤務の実態
  • 該当する雇用契約の期間
  • 各雇用契約ごとに契約を終了させて、新たに雇用契約を結ぶという形態をとる理由
  • ひとつの雇用契約と次に結ばれる雇用契約との間隔
  • 雇用契約を結ぶ際の採用手続、及び有給休暇が与えられている他の労働者とのバランス

など
そのため、実質的に労働契約が続いているといえる場合、例えば、

  • 臨時労働者が正社員として採用された場合
  • 定年退職者が嘱託として再雇用された場合
  • 短期労働契約が更新された場合

には「継続勤務」と認められることがあります。
実際の判例でも、日本中央競馬会事件(東京高判H11.9.30労判780号80頁)では、競馬開催時の開催従事員として雇用されるという契約を競馬開催ごとに繰り返していた労働者について、「継続勤務」の要件を満たすとしました。

また「全労働日」とは、労働契約上、労働義務がある日のことをいい、土曜日や祝日、年末年始休暇は含まれません(エス・ウント・エー事件(最三小判H4.2.18労判609号12頁))。

以上のように、要件を満たした場合には、入社日から6カ月経てば有給休暇を取得できます。

有給休暇の取り方

労働者は、時季(季節と具体的な時期のこと)を指定して有給休暇を請求する(労働基準法39条5項)ことで、有給休暇を取得することになります。

労働者としては、雇用主に対して、「○月頃に有給休暇を取りたい」あるいは「○日に有給休暇を取りたい」などと申し出ることになります。
では、申し出た労働者に対し、雇用主が有給休暇を取得する理由を説明させたり、その理由によって有給休暇の取得を制限したりすることはできるのでしょうか?

有給休暇を取得する権利は、労働基準法の要件を満たすことにより、法律にのっとって労働者が得るものであるため、雇用主の承諾は必要ありません。また、有給休暇の利用目的は、労働基準法では特に定められておらず、有給休暇をどのように利用するかは労働者の自由である、とするのが法の趣旨と考えられます(白石営林署事件(最二小判S48.3.2民集27巻2号191頁))。

そのため、労働者が有給休暇を取得する際、雇用主の承諾は不要ですし、有給休暇を取得する理由を説明する必要もありません。ましてや、雇用主が有給休暇の理由を強制的に説明させたり、その理由によって有給休暇の取得を制限したりすることはできません。

有給休暇の時季変更

雇用主には労働者の有給休暇を制限する権利はありませんが、「請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合」には、有給休暇を労働者が請求した日と異なる日に変更してもらう権利(時季変更権)があります(労基法39条5項但書)。

「事業の正常な運営を妨げる場合」とは、有給休暇取得日における労働者の労働が事業運営に不可欠であり、また、代わりの労働者を確保するのも難しいという場合のことです。これに当たるかどうかは、有給休暇を申請している労働者の所属する事業場を基準とし、以下の事情を考慮して、客観的・合理的に判断しなければなりません(弘前電報電話局事件(最二小判S62.7.10民集41巻5号1229頁))。

  • 事業の規模、内容
  • 該当する労働者の担当する仕事の内容、性質、忙しさ
  • 代わりに勤務する者の配置の難しさ
  • 同じ時季に年休を請求した者の人数

など
そのため、単に「業務が忙しい」などという理由では、労働者に有給休暇の時季の変更を求めることはできません。

また、労働者が、与えられた有給休暇の日数の範囲内で、具体的に有給休暇の時季を指定して上記の申し出をしたときに、客観的に「請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合」に当たる事情があり、かつ、これを理由として雇用主が時季変更権を行使しない限り、労働者の申し出によって有給休暇が成立し、その日に勤務する義務は消滅します(前掲白石営林署事件)。それにもかかわらず、雇用する側が時季変更をした場合、不法行為となり、損害賠償責任を負うこともあります(全日本空輸事件(大阪地判H10.9.30労判748号80頁))。

他方、雇用主が、事業場の過半数の労働者が所属する労働組合、または過半数の労働者の代表者との間で結んだ労使協定で、有給休暇を与える時季について定めたとします。この場合には、有給休暇のうち5日を超える部分について、労働者の希望にかかわらず、有給休暇の時季を決定し、計画的に有給休暇を取らせることができます(計画年休制度。労働基準法39条6項)。

これは、日本で有給休暇の取得率が低い理由として、有給休暇の取得が労働者個人の判断に委ねられていると職場の同僚や上司へ気兼ねする、という事情が考えられることから、職場で一斉に、または交替で有給休暇を計画的に消化し、有給休暇の取得を促進することを目的として導入された制度です。

有給休暇の事前申し出

雇用する側は、有給休暇取得者の代わりの人員を確保する必要があるため、就業規則などで、有給休暇の申し出を事前に行う必要がある、という内容を定めることができます(電電公社此花電報電話局事件(最一小判S57.3.18民集36巻3号366頁)。この事案では、前々日までに申し出る必要があるとの就業規則が適法とされました)。

事後の有給休暇の請求・振替

労働者が、会社を欠勤した後、その欠勤日を有給休暇の扱いにしてほしいと請求したり、雇用する側が事後的に有給休暇に振り替えたりすることはできるのでしょうか。

労働基準法に定める年次有給休暇の制度は、前述のように、労働者が具体的な時季指定をして申し出ることで、有給休暇取得日の労働義務を法律上当然に免れさせるものです。
他方で、雇用主には、時季変更権が認められています。雇用主が時季変更権を行使するためには、事前に時季変更が必要かどうかを検討し、労働者にその告知をするのに十分な時間が必要となります。そのため、労働者の有給休暇取得の申し出は、そのような相当の時間を置いてなされなければならないということになります。このように考えると、事後的な有給休暇の請求は、本来、成り立たないということになります。

もっとも、労働者が急病その他の緊急の事態のため、あらかじめ有給休暇の申し出をすることができずに欠勤した場合に、雇用する側が、労働者の求めに応じて、欠勤として扱わず、有給休暇に振り替えることは、雇用主の裁量の範囲内であり、一般的には違法ではないと考えられています(東京貯金事務センター事件(東京高判H6.3.24労民集45巻1・2号118頁)など)。

ただし、事後請求の理由として労働者が申し出た事情を考慮して、その欠勤日を有給休暇として処理すべきであるにもかかわらず、有給休暇へと振り替えない場合は、裁量権の濫用と見なされ、違法となることがあります(前掲東京貯金事務センター事件)。

有給休暇の日数

取得することのできる有給休暇の日数は、労働時間の長さによって異なります。フルタイム(雇用主と契約した労働日数が週5日以上、または契約した労働時間が1週間30時間以上)で働く労働者の場合は、次の表のようになります(労働基準法39条1項、2項)。

継続勤務年数法定最低付与日数
0.5年10日
1.5年11日
2.5年12日
3.5年14日
4.5年16日
5.5年18日
6.5年以上20日

これに対し、上記にあてはまらない場合(雇用主と契約した労働日数が週4日以下で、かつ、契約した労働時間が1週間30時間未満、または契約した年間労働日数が216日以下。多くのアルバイトはこれにあたります)、次の表のようになります(同条3項1・2号、労働基準法施行規則24条の3)。

週所定労働
日数
1年間の
所定労働
日数
継続勤務年数
0.5年1.5年2.5年3.5年4.5年5.5年6.5年以上
4日169~216日7日8日9日10日12日13日15日
3日121~168日5日6日6日8日9日10日11日
2日73~120日3日4日4日5日6日6日7日
1日48~72日1日2日2日2日3日3日3日

有給休暇の消滅

有給休暇を取得する権利は、翌年度まで繰り越すことができます(S22.12.15基発501号)。もっとも、有給休暇には有効期限があり、発生から2年後に消滅してしまいます(労基法115条)。

有給休暇の賃金

有給休暇の間の賃金については、労働基準法39条7項に規定されています。すなわち、就業規則や、その他これに準ずるものの規定に基づいて、平均賃金(過去3カ月分の賃金の総額を、その3カ月の暦上の日数で割った額をいいます。労働基準法12条)、もしくは通常の勤務をした場合に支払われる通常の賃金、またはこれらの額を基準として厚生労働省令の定めにより算定した額の賃金が支払われることになります。
ただし、労使協定により、健康保険法99条1項に定める標準報酬日額に相当する金額、またはこの金額を基準として厚生労働省令の定めにより算定した金額を支払うと定めることもできます。

有給休暇を取得できる日

有給休暇は、あくまで、本来出勤しなければならない日について取得できるものであり、もともと休みの日については取得することができません。

勝浦 敦嗣
弁護士

弁護士法人勝浦総合法律事務所 代表弁護士。東京大学法学部卒業、2001年弁護士登録。大手企業法務事務所、司法過疎地での公設事務所勤務を経て、現在、東京と大阪で弁護士11名が所属する勝浦総合法律事務所にて、労働事件を中心に取り扱う。

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