未払賃金立替制度について

未払賃金立替制度について

【筆者】 勝浦 敦嗣弁護士

会社が給料を支払ってくれないまま廃業してしまいました。どうしたらいいでしょうか?

このような場合、一定の条件を満たせば、未払賃金立替制度を利用することができます。

未払賃金立替制度とは

この制度は、勤めていた会社などが倒産したことによって、賃金が支払われないまま退職した労働者に対して、政府が、「賃金の支払の確保等に関する法律」(以下「法」)に基づき、未払賃金の一部を立て替えて支払うというものです。この制度は、独立行政法人労働者健康安全機構(以下「機構」)が実施しています。
この制度に基づいて賃金が立て替えて支払われた場合、機構は、このとき支払われた額について、賃金を請求する権利を労働者の承諾を得て代わりに取得し、本来賃金を支払う責任のある雇用主に請求します。

制度を利用するための条件

未払賃金立替制度を利用するためには、次の要件を満たしていることが必要となります(法7条、賃金の支払の確保等に関する法律施行令(以下「令」)2、3条、賃金の支払の確保等に関する法律施行規則(以下「則」)7条)。

(1)事業主が、
(ア)1年以上、労働者災害補償保険(労災保険)の適用事業の活動を行っていたこと
(イ)倒産したこと

(2)労働者が、倒産について裁判所への申し立てなど(法律上の倒産の場合)または労働基準監督署への認定申請(事実上の倒産の場合)が行われた日の6カ月前の日から2年の間に退職した者であること

以下、詳しく説明します。

(1)事業主について

まず、事業主が、(ア)1年以上、労働者災害補償保険(労災保険)の適用事業の活動を行っていたことが必要です。労災保険の適用事業とは、労働者災害補償保険法の規定が適用される事業をいいます。労働者を1人以上使用する事業であれば(ただし、同居の親族のみを使用する事業は含まれません)、農林水産業の一部を除いて、これに該当します。

次に、事業主が、(イ)倒産したことが必要です。「倒産」には、「法律上の倒産(破産、特別清算、民事再生、会社更生の場合)」と「事実上の倒産」の2種類がありますが、いずれも含みます。事実上の倒産とは、中小企業について、事業活動が停止し、再開する見込みがなく、かつ、賃金支払能力がない状態になったことについて労働基準監督署長の認定があった場合をいいます。ここにいう「中小企業」とは、以下の表のいずれかに該当するものをいいます。

業種資本の額または出資の総額常時使用する労働者数
一般産業
(卸売業、サービス業、小売業を除く)
3億円以下の法人300人以下
卸売業1億円以下の法人100人以下
サービス業5000万円以下の法人100人以下
小売業5000万円以下の法人50人以下

(2)労働者について

「労働者」とは、労働基準法9条に定められている労働者をいいます(なお、同居の親族は含まれません。法2条2項)。倒産した事業主に雇用され、賃金の支払いを受けていた人であれば、パートやアルバイトなども含みます。他方、代表権を持つ会社の役員などは含まれません。

そして、労働者は、倒産について裁判所への申し立てなど(法律上の倒産の場合)または労働基準監督署への認定申請(事実上の倒産の場合)が行われた日の6カ月前の日から2年の間に退職した者であることが必要です。例えば、破産などの申立日または認定申請日が平成29年2月10日であった場合、6カ月前の日である平成28年8月10日から、2年目の日である平成30年8月9日までの期間に退職した人が対象になります。

立替払いの請求ができる期間

労働者が立替払いの請求をするためには、裁判所の破産手続き開始の決定などがなされた日(法律上の倒産の場合)または監督署長による認定日(事実上の倒産の場合)の翌日から数えて2年以内に、立替払請求書を機構に提出する必要があります。

立替払いの対象となる賃金

立替払いの対象となる賃金は、退職日の6カ月前の日から機構に対する立替払請求の日の前日までに支払われるはずだった定期賃金及び退職手当で、その総額が2万円以上であるものです(法7条、令4条2項)。
定期賃金とは、基本給、家族手当、通勤手当、時間外手当など、毎月1回以上定期的に支払われる賃金のことをいいます。いわゆるボーナスなどは対象になりません。

立替払いされる金額

立替払いされる金額は、未払賃金の総額か、年齢に応じた上限額(退職時の年齢が45歳以上の場合は370万円、30歳以上45歳未満の場合は220万円、30歳未満の場合は110万円)のうち、いずれか低い方の8割の額です。

例えば、退職日の年齢が40歳、未払賃金の総額が250万円の場合、未払賃金より上限額(220万円)の方が低いため、立替払いされる金額は、220万円の8割である176万円ということになります。

勝浦 敦嗣弁護士

弁護士法人勝浦総合法律事務所 代表弁護士。東京大学法学部卒業、2001年弁護士登録。大手企業法務事務所、司法過疎地での公設事務所勤務を経て、現在、東京と大阪で弁護士11名が所属する勝浦総合法律事務所にて、労働事件を中心に取り扱う。

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