試用期間中の解雇について

試用期間中の解雇について

【筆者】 勝浦 敦嗣弁護士

試用期間中であれば解雇は自由にできますか?

試用期間だからといって、自由に労働者を解雇することはできません。試用期間中の解雇が許されるのは、試用期間中に、採用決定の時点で知ることができず、また知ることが期待できないような事実が判明し、その労働者を引き続き雇用するのが適当でないと客観的に認められる場合だけです。

試用期間の意味

試用期間とは、雇用主が、労働者を実際の職務に就かせてみて、採用試験や面接では知ることのできなかった職業能力や適格性などを、より正確に評価・判断するために設ける期間です。
雇用主が労働者を新たに採用するにあたり、労働者の適性を評価・判断するために、(試用期間ではなく)短い期間を定めた契約をしても、期間の満了により雇用契約が当然に終了する旨の明確な合意が当事者間に成立しているなどの特別な事情が認められる場合を除き、「試用期間」を定めたものと理解されることになります(神戸弘陵学園事件(最三判H2.6.5民集44巻4号668頁))。

試用期間の法的性質

試用期間の法的性質について定めた法律はありませんので、個別の契約の具体的な解釈の問題となります。就業規則の文言だけでなく、試用期間中の労働者に対する処遇の実情、特に本採用との関係における取り扱いについての事実上の慣行をも重視して判断することになりますが(三菱樹脂事件(最大判S48.12.12民集27巻11号1536頁))、長期雇用システムの下で行われている通常の試用は、「解約権留保付労働契約」であると考えられています。

すなわち、このような場合、当初から期間の定めのない労働契約が成立しており、ただ採用時には十分に判断できない労働者の適格性を判断するために、雇用主に契約を解除する権利が留保されているにすぎないということです。

通常の解雇との違い

解雇予告制度について

通常、労働者を解雇する場合には、原則として、少なくとも30日前に予告するか、または予告しない場合は平均賃金(過去3カ月分の賃金の総額を、その3カ月の暦の日数で割った額をいいます。労働基準法(以下「労基法」)12条)の30日分以上の解雇予告手当を支払わなければならない、という解雇予告制度が適用されます(労基法20条、21条)。
他方、試用期間中の労働者の場合、「14日を超えて引き続き使用されるに至った場合」にのみ、解雇予告制度が適用されます(労基法21条4号)。したがって、働き始めて14日以内であれば、解雇予告手当を支払う必要はありません。

解雇が認められる範囲

労働者の解雇が有効とされるには、客観的かつ合理的な理由および社会的相当性が必要であり(労働契約法16条)、これは、試用期間中であっても同様です。
もっとも、試用期間中の解約権の行使は、通常の解雇の場合よりも広い範囲で認められると考えられています(前掲三菱樹脂事件)。詳しくは、次の判例紹介で述べます。

判例紹介「三菱樹脂事件」

前掲三菱樹脂事件では、試用期間における留保解約権は、通常の解雇の場合よりも広い範囲における解雇の自由が認められるとされました。というのも、この留保解約権は、労働者の適格性について、後日における調査や観察に基づく最終的決定を留保するという趣旨で設定されたものと考えられるからです。

もっとも、試用期間中の労働者は、本採用についての期待の下、他企業への就職の機会と可能性を放棄しているという事情などを考慮することも必要です。そこで、留保解約権の行使は、解約権留保の趣旨と目的に照らして、客観的に合理的な理由が存在し、社会通念上相当として是認されうる場合にのみ許されるとしました。具体的には、会社が採用決定後に調査した結果、または試用期間中の勤務状態などによって、当初知ることができず、また知ることが期待できないような事実が判明した場合で、その者を引き続き雇用しておくのが適当でないと判断することが客観的に相当であると認められる場合にのみ、留保解約権の行使が許される、とされました。

どのような場合なら解雇は有効か

前掲三菱樹脂事件の基準によれば、仕事に向いていない、気が合わないなどという漠然とした理由で解雇することはできません。
他方、経歴の詐称、試用期間中の勤務成績・態度の不良、業務遂行能力の不足、協調性の欠落などの理由による解雇であれば、有効とされる可能性があります。

もっとも、これらの理由についても、勤務記録やタイムカードなどの客観的な資料から判断されたものであり、雇用する側が指導をしたにもかかわらず改善が見られなかったなどという場合でなければ、「引き続き雇用しておくのが適当でないと判断することが客観的に相当」とはいえません。また、試用期間途中に勤務態度の不良などがあったとしても、残りの試用期間を勤務することで改善する余地もあると考えられます。このことから、将来も改善の余地がなく、直ちに解雇してもやむを得ないといえる状況でなければ、試用期間途中の解雇は認められず、無効となる可能性があります。

勝浦 敦嗣弁護士

弁護士法人勝浦総合法律事務所 代表弁護士。東京大学法学部卒業、2001年弁護士登録。大手企業法務事務所、司法過疎地での公設事務所勤務を経て、現在、東京と大阪で弁護士11名が所属する勝浦総合法律事務所にて、労働事件を中心に取り扱う。

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