選考基準と採用予定人数の差別禁止の例外について

選考基準と採用予定人数の差別禁止の例外について

【筆者】 勝浦 敦嗣弁護士

年齢や性別ごとに選考基準と採用予定人数を分けてもいいですか?

年齢や性別ごとに選考基準と採用予定人数を分けることは、原則として、雇用対策法10条および男女雇用機会均等法5条違反となります。

労働契約も民事上の契約の一種ですから、契約自由の原則という一般原則が適用されます。つまり、労働者側がどの会社に就職するかの自由を有している一方で、雇用者側がその労働者を採用するかは、原則として自由ということになります(採用の自由)。
採用の自由には、どのような者をどのような条件で雇うかを決定する自由(選択の自由)が含まれます。もっとも、選択の自由は、何らの制約もなく認められているわけではありません。以下、具体的に説明します。

年齢について

雇用対策法は、労働者の募集と採用に係る年齢制限を、原則として禁止しています(10条)。
例外的に年齢制限が認められるのは、厚生労働省令で定められている事由に該当する場合です。具体的には、

  • 長期勤続によるキャリア形成を図る観点から、若年者を募集、採用する場合(いわゆる新卒の期間の定めのない労働契約を締結することを目的とする場合に限る)
  • 技能、ノウハウなどの承継の観点から、特定の職種において労働者数が相当程度少ない特定の年齢層に限定して募集、採用する場合
  • 芸術、芸能の分野における表現の真実性などの要請がある場合

などに限られます(同法施行規則1条の3第1項)。以上より、例外にあたる場合を除き、年齢ごとに選考基準と採用予定人数を分けることは、同法10条に違反する行為ということになります。

性別について

男女雇用機会均等法は、労働者の募集と採用について、性別を理由とする差別を禁止しています(5条)。同法10条1項に基づいて厚生労働大臣が定めた指針(H18.10.11厚労告614号。H25.12.24厚労告382号改正)によれば、例えば、

(ア)募集または採用にあたって、その対象から男女のいずれかを排除すること
(イ)募集または採用にあたっての条件を男女で異なるものとすること
(ウ)採用選考において、能力と資質の有無などを判断する場合に、その方法や基準について男女で異なる取り扱いをすること
(エ)募集または採用にあたって男女のいずれかを優先すること

これらは、同条で禁止される行為にあたります。

差別禁止の例外

他方、差別禁止の例外として、

(1) 芸術、芸能の分野における表現の真実性の要請から男女のいずれかのみに従事させることが必要である職務
(2)守衛、警備員などのうち防犯上の要請から男性に従事させることが必要である職務
(3)(1)および(2)に掲げるもののほか、宗教上、風紀上、スポーツにおける競技の性質上その他の業務の性質上男女のいずれかのみに従事させることについて、(1)および(2)と同程度の必要性があると認められる職務

などについては、採用などにおいて男女で異なる取り扱いをしても、同条違反にはならないとされています。

また、同法は、形式的には性中立的であるとしても、実質的に性別を理由とする差別となるおそれがある措置(業務上の必要性など、合理的な理由がない場合に、募集または採用などにおいて、労働者の身長・体重・体力を要件とすることなど)を、間接差別として禁止しています(7条)。
例えば、荷物を運搬する業務を内容とする職務について、当該業務を行うために必要とされる筋力よりも強い筋力があることを募集または採用の要件とする場合は、合理的な理由がなく、間接差別にあたると考えられます。

もっとも、これまでの女性労働者に対する取扱いなどが原因となり、職場に事実上生じている男女間の格差を是正するために、事業主が女性のみを対象とするまたは女性を優遇する措置(ポジティブ・アクション)を取ることは、同法違反にはなりません(8条)。

以上より、例外にあたる場合を除き、性別ごとに選考基準を分けることは指針の(イ)または(ウ)にあたり、性別ごとに採用予定人数を分けることは指針の(エ)にあたり、同法5条に違反する行為ということになります。

上記規制に違反する行為があった場合

上記規制に違反する行為は、不法行為(民法709条)にあたり、損害賠償請求の対象となります。
他方、労働契約は両当事者の合意によって成立するものですから(契約締結の自由)、上記規制違反を理由に採用の強制を求めることはできないと考えられています。

勝浦 敦嗣弁護士

弁護士法人勝浦総合法律事務所 代表弁護士。東京大学法学部卒業、2001年弁護士登録。大手企業法務事務所、司法過疎地での公設事務所勤務を経て、現在、東京と大阪で弁護士11名が所属する勝浦総合法律事務所にて、労働事件を中心に取り扱う。

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