労災保険に未加入時の給付手続きと雇用主のリスクについて

労災保険に未加入時の給付手続きと雇用主のリスクについて

【筆者】 勝浦 敦嗣弁護士

雇用主が労災保険に加入してくれていないようです。労災事故が起きた場合にどうなってしまうのでしょうか?

1名でも従業員(パート、アルバイトを含みます)を雇う者は、会社であっても個人事業であっても労災保険に加入する義務があります(強制保険)。

労災保険に加入していない場合の給付手続

ですが、強制保険であるにもかかわらず、労災保険に加入していない雇用主も存在します。
従業員を雇っているのに労災保険に加入していなかった事業所で労災事故が起こった場合でも、労働者は労災保険の給付の申請を行うことができます。雇用主に落ち度があっても、労働者が保護される制度となっているのです。
こういったケースでは、雇用主が労災保険の給付手続に協力してくれない可能性もあります。本来であれば、雇用主から、負傷または発病の日時や災害の原因などの証明をしてもらう必要がありますが、もし雇用主がこれに応じない場合は、労働基準監督署に事情を説明することで労災給付申請が可能です。

労災保険に加入しない場合の雇用主のリスク

労災保険に加入していない事業所で労災事故が生じた場合、雇用主は事業開始時期までさかのぼって保険料を納めなければなりません。加えて、下表のとおりの違反金も支払わなければなりません。

労災保険の加入手続について行政機関から指導などを受けたにもかかわらず、手続を行わない期間中に業務災害や通勤災害が発生した場合「故意」に手続を行わないものと認定し、当該災害に関して支給された保険給付額の100%を徴収
労災保険の加入手続について行政機関から指導などを受けてはいないものの、労災保険の適用事業となったときから1年を経過して、なお手続を行わない期間中に業務災害や通勤災害が発生した場合「重大な過失」により手続を行わないものと認定し、当該災害に関して支給された保険給付額の40%を徴収

例えば、賃金日額1万円の従業員が労災事故で亡くなった場合、遺族補償一時金は1000万円となります。労災保険の加入を怠っていた雇用主は、これまでの労災保険料を支払うだけでなく、400万円(労災保険の加入手続について行政機関から指導などを受けていた場合は1000万円)を労災保険に支払うことになってしまいます。

従業員に安心して仕事に邁進してもらうためにも、また、万が一労災が発生した場合に、経営に重大な影響が生じないようにするためにも、一人でも従業員を雇う雇用主は、必ず労災保険に加入するようにしてください。

勝浦 敦嗣弁護士

弁護士法人勝浦総合法律事務所 代表弁護士。東京大学法学部卒業、2001年弁護士登録。大手企業法務事務所、司法過疎地での公設事務所勤務を経て、現在、東京と大阪で弁護士11名が所属する勝浦総合法律事務所にて、労働事件を中心に取り扱う。

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