パワハラ・セクハラについて

パワハラ・セクハラについて

【筆者】 佐々木 亮弁護士

セクハラとは?

セクハラとは、セクシャルハラスメントの略語で、職場において、労働者の意に反する性的な言動が行われ、それを拒否するなどの対応により、解雇、降格、減給などの不利益を受けることや、性的な言動が行われることで職場の環境が不快なものとなったため、労働者の能力の発揮に悪影響が生じることを言います。

セクハラが問題として見られるようになったのは1980年代まで遡ります。このころから女性の人権問題としてとらえられるようになりました。
その後、平成9年に男女雇用機会均等法が改正され、事業主にセクハラに対する配慮義務が設けられました。平成18年にはその義務が措置義務に強化され、事業主はセクハラに対して雇用管理上の問題として取り組まなければならなくなりました。

セクハラには、対価型セクハラと環境型セクハラがあります。
対価型セクハラとは、たとえば、男性上司が性的な意図をもって女性の部下を食事に誘ったところ、その女性部下がその誘いを断った場合、この女性の対応に対して男性上司が仕事上の査定・評価を悪くしたり、重要な仕事を与えないなど、不利益を与える形のセクハラをいいます。
他方、環境型セクハラとは、たとえば、男性社員が女性のヌードポスターを張るなどして、女性労働者の就業環境を害するようなセクハラがこれに当たります。また、上司が労働者の体に触ることで、当該労働者の就業意欲が低下するような場合もこれに当たります。

セクハラの行われる「職場」の意味

セクハラは、「職場」で行われることが必要です。ただ、この「職場」は会社の社屋内という意味ではありません。取引先に商談に行っている場合でも、そこは「職場」ですし、営業の接待や会社が開催する宴会なども、「職場」に該当する場合もあります。

事業主の責務

事業主は、セクハラが起きないように一定の措置を取る義務があります。
まず、セクハラの内容やセクハラがあってはならないという点をルールとして明確化し、労働者に周知・啓発を図ることが必要です。また、もしセクハラ行為があれば厳正に対処することをルールとして明確化して、それを労働者に周知・啓発しておく必要があります。

さらに、セクハラ相談窓口を整備したり、もしセクハラの事実があれば迅速・適切に対応することも求められます。もちろん、こうした過程でセクハラを受けた者や関係者のプライバシーに配慮しなければなりません。

セクハラは性別に関係なく加害者・被害者になりうる

かつては、セクハラの問題は男性から女性への問題とみられていました。
もちろん、この形のセクハラが多いことは事実です。しかし、最近では女性から男性に対してセクハラが行われる場合もあるし、男性から男性、女性から女性ということもあるため、どんな形であれセクハラを許さない、という姿勢での対応が必要です。

セクハラ被害を受けた場合

セクハラを受けた場合は、社内の相談窓口や、国や地方公共団体の設置している窓口または、労働組合、弁護士などに、相談をして対処することが大事です。
セクハラに対して取りうる法的手段は、民事損害賠償請求や、事案の内容によっては刑事告訴もありえます。また、セクハラにより精神障害になった場合は、労災申請も可能です。

パワハラとは?

パワハラとは、パワーハラスメントの略語で、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える、または、職場環境を悪化させる行為をいいます。

パワハラの相談は近年増え続けており、労働局に寄せられる相談のうち、最も多いものとなっています。セクハラとは異なり、パワハラを制限するような法律は、現在はありません。ただし、だからといってパワハラが許されているわけではありません。パワハラによって受けた被害について、会社や行為者を相手に損害賠償の訴訟をする事案は増えており、裁判所においてパワハラを不法行為として扱う判決も多く存在します。

パワハラの行為類型

パワハラの行為類型としては、次の6類型に分けるものが有名です(「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ報告」(平成24年1月30日)より)。

  1. 暴行・傷害(身体的な攻撃)
  2. 脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言(精神的な攻撃)
  3. 隔離・仲間はずし・無視(人間関係からの切り離し)
  4. 業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害(過大な要求)
  5. 業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと(過小な要求)
  6. 私的なことに過度に立ち入ること(個の侵害)

ただ、これもあくまでも一例であり、これに該当しないからパワハラではない、ということになるわけではありませんので、注意が必要です。

パワハラは記録を取ろう

パワハラを受けた場合は、社内の相談窓口があれば、そこに相談することが考えられます。しかし、場合によっては加害者に筒抜けになることもあります。また、国や地方公共団体に相談をしたり、労働組合、弁護士などに相談したりすることもできます。

ただ、パワハラについては立証が難しい現実があります。セクハラの場合は、そもそも職場に性的なものが持ち込まれることが「異常事態」なのですが、パワハラは業務にかこつけて行われる場合があるため、より立証が難しいのです。ですので、被害にあっている場合は、録音をするなど記録を残し、第三者にも理解してもらえるようにしておくことが大事です。

パワハラに対して取りうる法的手段は、民事損害賠償請求や、暴力などが伴っている場合は刑事告訴などが考えられます。また、パワハラにより精神障害になった場合は、労災申請も可能です。

佐々木 亮弁護士

東京弁護士会弁護士。旬報法律事務所所属。日本労働弁護団常任幹事。ブラック企業被害対策弁護団代表。ブラック企業大賞実行委員。首都圏青年ユニオン顧問弁護団。民事事件を中心に取り扱う。また、労働事件は労働者側・労働組合側の立場で事件を取り扱う。

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