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命の連鎖の中にこそ人の役割もある!知的障害者たちが働き、サミットや国際線ファーストクラスにも採用されたワイン造りの奇跡(後編)

2017年 10月 5日

(株)FeelWorks代表取締役/青山学院大学兼任講師 前川孝雄

前川孝雄の取材後記:経営者は「人をコントロールする」発想を捨て、「ありのままを受け容れる逞しさ」を鍛えよ


 池上専務のお話を伺っていて、会社や上司が「人をコントロールする」という考え方のおこがましさを改めて感じた。経営や人材育成も本質は自然を相手にするのと変わらないはずだ。私たちFeelWorksはまさに人材育成を業としているが、上から「人を活かす」「人を育てる」というスタンスでどれだけテクニックを労しても、人は動かないことをさまざまな現場を通して痛感している。
 私たちは社会という大きな命の連鎖の中で、池上専務の言葉を借りれば「微生物のように」それぞれの役割を果たしているに過ぎない。経営者も上司もその部下も、言ってみれば同じ微生物のような存在なのだ。しかし、ビジネスや組織運営が複雑になっている現代では、その全体像が見えにくい。視野が狭くなると自分の立場や力の錯覚・過信につながる。そんな状態でいくら緻密な計画を立てても、実際にはほとんどがうまくいかない。
 池上専務は「今はみんな『わからない』ことがわからなくなっている」と言う。本当に求められているのは、わかったつもりで自分の中で答えを出すことではなく、「葡萄の声に耳を傾けるように」、本来思うようにはならない顧客や社員の声に謙虚に耳を傾けることではないだろうか。
 もちろん、一般の企業が今すぐにココ・ファーム・ワイナリーのような営みを実践することは難しいだろう。まずは、「人をコントロールする」という発想を捨てることができるかどうか。それが「人が育つ組織」を作るための第一歩になるはずだ。
 ココ・ファーム・ワイナリーの歴史をたどれば、倒産の危機も何度かあった。しかし、池上専務は、被害総額が1億円に上った火災について語るときも、「トイレも焼けちゃってね、これが本当の『やけくそ』よ(笑)。あと、ワインも焼けちゃったから、こっちは『やけ酒』ね(笑)」と冗談交じり。この明るさと強さは、目先の利益や効率だけに縛られている経営者には決して持てないものだ。「ありのままを受け容れる逞しさ」とでもいうべきだろうか。私自身も経営者として学ぶことの多い取材だった。


構成/伊藤敬太郎

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(株)FeelWorks代表取締役/青山学院大学兼任講師 前川孝雄

人材育成の専門家集団㈱FeelWorks創業者。約300社で導入される「上司力研修」や「人を活かす経営者ゼミ」、「育成風土を創る社内報」編集などを手掛け、長期伴走型で徹底した人が育つ現場創りを支援。部下を育て組織を活かす上司力提唱の第一人者。親しみやすい人柄にファンも多い。著書に『上司の9割は部下の成長に無関心』(PHP)、『ダイバーシティの教科書』(総合法令出版)、『女性の部下の活かし方』(メディアファクトリー新書)など多数。最新刊『「働きがいあふれる」チームのつくり方』(KKベストセラーズ)はamazon「企業経営」「企業革新」カテゴリー1位、紀伊国屋書店や丸善などで新書1位のベストセラー。